01導入前の課題
組織拡大の壁は「マネジメント層との分断」
ONESTRUCTIONは、BIM(Building Information Modeling)をはじめとする建設領域のソフトウェアを開発する企業だ。国際標準規格の策定に参画し、鳥取から世界を見据える。
伴走が始まった1年半前、社員は16名。事業は順調で、プロダクトの方向性に大きな対立があったわけでもない。それでも西岡様が動いたのは、前職・リクルートでの経験があったからだった。
西岡大穂様:リクルートのジョイントベンチャーが2〜300人へ伸びていく中で、たくさんの筋肉痛を見てきました。事業が伸びない、KPIが達成できない。原因を辿っていくと、大体は組織間の壁だったり、マネージャー陣が事業の未来に対してズレを抱えていたり。そこがすごく大きかったなと。
ONESTRUCTIONにも、同じ種があった。ズレの正体は、未来に対する優先度の違いだ。
西岡様:目の前の事業をやることに関しては、大きなズレは生じないんです。ただ『建設とテクノロジーの架け橋になる』という、さらに大きな山を登ろうとすると、今のプロダクトだけではダメで、もっと他の仕掛けもやっていきたい。でもそういうワードが出た時に、どうしても現場は足元の業務の優先度が高くなってしまう。経営者としては、未来にベットすることも、足元を詰めることも、全く同じ優先度なんです。
亀裂が入ってからでは、修正はきかない。傷が浅いうちに手を入れる。それが16人の時点での判断だった。伴走に入った小野村の目にも、当時の組織はこう映っていた。
小野村學:最初に伺った時、全員が集まる場がすごくよそよそしいなと。人生について語り合うワークをしたのですが、飛び交う質問も『その質問?』というもので、終わったあと西岡様と『あれは設計した方が良かったですね』と話した記憶があります。集団やチームというよりは、それぞれ頑張っている人が集められた、という感覚でした。
02導入の決め手
人事の専門性より「事業を創る感覚」
経営者の壁打ち相手や組織コンサルタントの選択肢は無数にある。その中で、西岡様がFounders Coachの小野村を選んだ理由は「事業家の匂いを感じ取ったから」だ。
小野村:Founders Coachでは、大企業ならマネジメント層以上、スタートアップなら執行役員以上など、実際に事業の最前線で修羅場を潜ってきた人間しか伴走に入らないと決めています。理論ではなく、事業の現場でしか生まれないリアリティを共有したかったからです。
西岡様:単なる人事領域のプロフェッショナルというだけでなく、極めて高い事業の解像度を持たれていました。本当にこれまで事業の最前線に立ってきたんだなということが、言葉の端々から染み出るように伝わってきたんです。そこが一番惹かれたポイントかもしれません。
西岡様:『あなた自身は何がしたいんですか?』と僕個人の内面に興味を持ってくださる方はたくさんいらっしゃる中で、學さんは常に『会社として、どこに行きたいんですか?』と組織の未来を深く聞いてくださる。それに対して『じゃあこんなこともできそうですね』と事業の未来を一緒に喋れたっていうのは非常に大きなポイントでした。
もう一つ、西岡様が重要視したのは、強烈な個性を持つ社員たちと真正面から向き合うための、根底にある「愛」だった。他社の経営者との関わり方を見る中でも、小野村の関係性の深さとフラットなスタンスに触れ、西岡様はFounders Coachと組織の未来を共創することを決めた。
03取り組みのリアル
組織が変わらない焦りと、伴走者からの客観的な問い
経営チームのトレーニング、西岡様個人のエグゼクティブコーチング、そして全社のサーベイといったプログラムが走り出したが、組織変革は一朝一夕で進まない。西岡様は、若き経営者ならではの焦りと葛藤に直面する。
西岡様:強烈な個性が集まる組織の中で、事業も組織も作り、さらに自己変容もしなければならない。手も足も、頭も足りないのがリアルな現実でした。一番悩み苦しんだのは、自分が思うスピードで組織が変化していかないこと。これだけの機会を作っているのに変わらない人を見ると、『なんで変わってくれないんだろう』と苛立ちに似た思いを抱いてしまうこともあって。
Founders Coachの伴走は、単に受容し承認するだけではない。小野村は、焦燥感に駆られるCEOに安易な同調や慰めを与えなかった。
西岡様:その度に學さんから、『いや、でも組織ってそういうものじゃないですか』って冷静に返されて。対話の中で『でもここは確実に変わりましたよ』とか『こういう方向には進んでますよね』と、客観的な立場からの定点観測をしていただいたおかげで、『確かにな』と。変化の難しさをあるがままに受け入れられました。
西岡様が描く未来に対しても、小野村はあえて厳しく問い続けた。そのなかで投げかけられた問いが「あなたがなりたい姿に近づくために、会いたい人にはちゃんと会えているんですか?」だった。
西岡様:それにハッとさせられて。自分がもっとスケールするために、先輩経営者にもっと会いにいかなければと、マインドチェンジのスイッチが入ったんです。よくある形式的な『なんでですか?』ではなく、あらゆる角度から根本から厳しく問うてくださった。厳しさの中に愛があったからこそ、真正面から向き合えたんだと思います。
会社の代表として、誰よりもポジティブで前を向いていなければならないし、同時に最も悲観的でもなければならない。でも學さんの前では、疲労困憊の状態や、二日酔いの姿すらも曝け出して本音を話せる。一緒にいて心地よいというのも、非常にありがたい部分でした。
04経営チームの変化
傍観者から当事者へ。生まれた「本音の対話」
最も劇的な変化を遂げたのは、他ならぬ西岡様自身だった。導入前は「言えない本音」に苦しんでいたという。この孤独な状況を打破した最大の要因は「経営チーム全体」へのアプローチだった。
西岡様:僕個人だけではなく、マネジメントチーム全体として伴走いただいたことが非常に大きかった。マネージャー同士の横の繋がりができたことで、僕が仮に強く言ったとしても、マネージャー間で咀嚼してくれたり、逆に『西岡様、それは違いますよ』と言ってくれれば、素直に自分の意見を変えればいいんだと思えるようになった。結果として、恐れずに自分の思いを言えるようになったんです。
「言えない本音」という重圧から解放されたことで、西岡様が語るビジョンのスケールにも劇的な変化が起きた。
西岡様:僕は元々結構保守的な人間で、自分がまだやれていないことを『やれます』と大風呂敷を広げられないタイプなんです。これまでは10あることを積み上げたら、せいぜい20の未来を語るような状態でした。でも今は、10積み上げた時点で『100の未来』を描けるところまで自己変容できました。
最大のトリガーは、経営チームのメンバー自らが『西岡様が未来のビジョンを見るために、僕らが現場を死守します』と背中を押してくれたことです。僕個人だけでなく、経営チーム全体を支援していただけたからこそ、今の自分の変容があるんだと思います。
05組織全体の変化
受け身の現場が、自走し始めた
経営トップとマネジメント層の意識が揃い、関係性の質が向上したことは、やがて全社へと波及していく。その象徴的な出来事が、鳥取本社に全社員が集まった全体集会での光景だった。
西岡様:半年前の集会の時には、知り合いじゃないメンバー同士が自発的に会話したり、仕事を紹介し合うことってあまり起きてなかったんです。でも今回、鳥取でやった時には、もうみんなが勝手に喋り始めて、勝手に紹介し合って、勝手に仕事の先の未来の話をするみたいなことが自発的に起きていて。組織の中に自発性が熱気として溢れる場になっていたんです。
日常業務においても「この課題をどうにかしてください」という受け身の姿勢から、「現場でこういう解決策を考えているんですが、どう思いますか?」という主体的なコミュニケーションへと変化した。メンバー全員が当事者意識を持った証拠だ。一方で、自発性が生まれたからこその課題もある。
西岡様:現場での意見の対立は増えているんですよ。今までみんながマネージャーにボールを渡して何もしなかったところから、ちゃんと全員がボールを持ち始めると、当然意見をぶつけ合うようになる。でも、合宿などを通じて『対話しよう』というアクションをみんなが自ら起こしてくれているので、単なる対立になって終わりではなく、『対立からの対話』へと移れているシーンが確実に出てきつつあります。
表面的な仲の良さではなく、本気で事業に向き合うからこその健全な対立。そして、それを乗り越えるための対話が生まれつつある。
06コーチから見た成果
非連続に成長する「経営陣の気概」
小野村:最初に来た時は、チームというよりかは、それぞれが頑張ってる個人の集合体という感覚がありました。でも今は、そこにいるリーダーたちが『俺が引っ張っていくぞ』って気概をひしひしと発しています。普通だったら経営陣が心配して介入しそうなトラブルも『そこは自分たちで解決できます。今悩んでいるのは、もう一歩踏み込んだ深い次元のことなんです』という言葉が、現場から自然と出てくる。すごくたくましくなったなと感じます。
小野村:劇的に変わったのは、描くビジョンのスケールです。それがいわゆるスタートアップが語るような『ふわっとした夢物語』ではなく『必ず実現できる』という確信と、具体的な手触りを伴った未来として語られるようになった。トップがそこまで高い解像度で未来を描き切れているからこそ、チーム全体が確実にそのビジョンに引っ張られ、変容していきます。
07今後の展望
鳥取から世界へ。建設×AIの「ルールメーカー」に
シリーズAでの大型資金調達、国際標準規格への関与。ONESTRUCTIONが目指す未来は、単なる国内のソフトウェアベンダーの枠には収まらない。既存のルールの中で勝つのではなく、自らがルールメーカーになり、世界標準のインフラ基盤を作る。
西岡様:私たちは創業した時から『鳥取から世界へ』と言い続けてきました。鳥取ナンバーワンの会社になり、その結果として世界に通用する企業になりたい。そこへ行く時に、我々は何度も自己変容をしなければならない。學さんには『変容を当たり前とするカルチャー』の構築に伴走してもらいたいです。
その高い視座と覚悟に対し、伴走者である小野村もまた強い確信を持っている。
小野村:今後ONESTRUCTIONが非連続な成長をしていく中で、M&AやPMIなど、今まで自分たちにない血を入れていくフェーズが必ず来るでしょう。凄まじい非連続な成長をしていく時の『変容』を、単なるアドバイザーではなく、同じ経営のリアルを知る当事者としてこれからもご一緒したい。私はONESTRUCTIONが世界標準のインフラ基盤になれると確信していますし、そうならないといけない。ぜひ一緒にやっていきましょう。